Royal Scandal

Episode5

ビタースウィート

皇族なんて退屈だ。燃えるくらいの刺激が欲しい。
そして皇子アルベールは、今宵も王宮を抜け出しフロルの街へ繰り出す。その中でも一際輝くのは、噂のBarマスカレイドだ。
店に立ち寄ったアルベールは、運命の出会いを果たす。歌姫チェルシーに恋をしたのだ。
将来の妃に迎えるなら彼女しかいない。そう決めたアルベールは颯爽と舞台に上がり、チェルシーの手に甘く口づけをする。
「一度だけでもいい。皇家の舞踏会で歌声を聞かせてくれないか?」
初めは抵抗するチェルシーだったが、アルベールが優しく説得すると、なぜか物憂げな表情で静かに申し出を受け入れる。
そして舞踏会当日。各地の歌姫が華やかに歌を披露するが、それでもやはりチェルシーの歌は格別だった。
アルベールの決意は揺るがない。彼が婚約を申し出ようとした、その時。
「……迎えに来た」
午前0時の鐘と共に靴音を鳴らしたのは、Barマスカレイドのバーテンダー ルイスだった。