チェリーハント
どんな男も振り返るイイ女。それがBarマスカレイドの歌姫チェルシー。
舞台に立つという夢を叶え、今やフロルの街で最も華麗に咲く高嶺の花。
だが、そんな彼女にも手に入れられないものがあった。バーテンダーとして働く、幼馴染のルイスだ。
仲良く遊んでいたのは過去の話。今の彼は仕事ばかりで、最近はいつ会話をしたかも覚えていない。
チェルシーが見てほしいのは、あの頃の未熟な自分じゃない。最高に輝く今の私を見てほしいのに……。
ある夜、真面目に閉店作業を進めるルイスに、チェルシーがつぶやく。
「あんたって、ほんっと変わらないわね」
投げかけたルイスからの返答は、意外なものだった。
「あなたは、変わりましたね」
その言葉に反応するように、チェルシーはバーカウンターに身を乗り出し、ルイスに想いをぶつける。だが返ってきたのは、彼の冷たい"お愛想"だった。
「夢を叶えたあなたを、これからも見守っていますよ。”こちら側”でね」