光
この国に、光なんてない。
貴族階級は贅の限りを尽くし、剰え奴隷まで飼い馴らす。
いま貧民街に逃げてきた奴隷の少年も、そんな人間たちの裏の顔を見てきた一人。
廃品の山から金目の物を漁り、それらを売ってなんとか飢えを凌いでいた。
ある日、少年は廃品の山から綺麗な鍵のようなネックレスを発見する。これは高く売れそうだと手を触れると、突然周囲が光に包まれた。
そして少年が見たものは、ひとりの少女の人生。その幼い頃から最期の瞬間までを、誰かの視点で見守っている……そんな、なんとも不思議な幻だった。
少年はネックレスを持ち帰り、何度もその幻を見た。明日生きられるかも分からない影ばかりの人生にも、一筋の光を差してくれる。それは彼にとって、いつしか生きる希望となっていた。
ネックレスと少女の真実を知るため、少年はフロルの街にある大図書館へ向かうことを決意する。だがそこで待っていたのは、少年の主人が送った追手だった……。