Royal Scandal

Episode7

チェルシー

雨上がりの虹を眺めても、アリシアの心はどこか晴れないまま。
身寄りもなくBarマスカレイドに預けられた少女は、慌ただしい日々をただぼんやりと過ごしていた。
そんな中、新たにルイスという少年が店にやってくる。どこから来たのかは分からないが、毎日真面目に仕事をこなす彼の姿に、アリシアは不思議と惹きつけられていった。
ある日、こっそりルイスのあとをつけて森の中を抜けると、彼が大切にしている大きな桜の木に辿り着く。
「私はアリシア。ね、あなたの名前を教えてよ」
桜の下で初めて秘密を分け合った2人は、まるで出会う前からそうであったかのように、すぐに打ち解けあった。
それから2人は休憩時間にこっそり抜け出し、“チェルシー”と名前をつけた桜の下で、よくお話をするようになった。
時期は春。“チェルシー”の花が満開になるまで、あともう少し。だが、恐ろしい大嵐が迫っていることに、2人はまだ気づいていなかった……。