マジックリングナイト
砂の海がざわめく。今夜は、不思議なことが起こりそうだ。
交易路を渡る商人のアラムは、砂漠の岩陰でオリヴィアという美しい女性と出会う。
彼女は異国から来た貴族のご令嬢。父の外遊に伴いこの国まで来たが、社交界の息苦しさに嫌気がさして逃げ出してきたという。
異国に興味を示す彼女の手を取り、アラムはあらゆる景色を見せる。ふたりが恋に落ちる頃には、ひとつに重なる影を月だけが映していた。
だが、その恋は実らない。格式高い旧家の娘と、かたや貧しい商人。あまりにも身分が違いすぎるのだ。
結局オリヴィアはあっさりと見つかり、使用人たちに連れ戻されてしまう。
自分にもっと、彼女と釣り合うほどの権力があったなら……道端でうなだれるアラムに声をかけたのは、不気味な笑みを浮かべる帽子屋の男だった。
「おおやおや、お困りごとですか? そりゃあ大変! ではこれはご存知です? ……どんな権力も手に入る、”魔法の指輪”の物語を」