BULLET
スヴェンには、初めからどうでもよかったのだ。
北の国の厳格な家庭で生まれた彼は、親から「西の国の名門校に入学させる」という高すぎる期待をかけられ、幼い頃から異常なほど勉強に明け暮れた。
それ以外のことは、何もない。唯一、話し相手は人形だけ。それだけの人生だった。
しかし受験当日。スヴェンが北の国出身であると知った他の生徒に嵌められ、意図せず不正行為に加担してしまう。
当然、結果は不合格となり、スヴェンは両親からも見放される。親の願いを叶えるためだけに生きてきた彼は、気づけば自分の夢も願望もない。操り手のいない空っぽな人形になっていた。
なんとかBarマスカレイドで働き始めるが、結局ここでもまた陰湿ないじめを受けてしまう。
こんな人生に意味なんてない……命の糸を自ら断ち切ろうとした瞬間。
「ねぇ、そんな悲しい顔してどうしたの?」
声をかけてきたのは、この店の男たちに慕われる女。給仕係のロゼッタだった。