ファントムペイン
歌姫になることが夢だった。だがレベッカは、母になる人生を選んだ。
Barマスカレイドの衣装デザイナーを務める彼女は、恋人のリチャードと静かに暮らしていた。
しかし酒癖の悪いリチャードは、仕事の鬱憤をレベッカへの暴力で晴らすようになっていく。
それだけなら何とか耐えられたが、ついにリチャードの暴挙が彼女の連れ子ロゼッタにも向けられてしまう。
レベッカは母として、あるいは女として、最悪の二択を迫られていた。
娘は守らなければならない。でもリチャードと別れることなんて出来ない。もちろん、どちらかが居ない世界なんて絶対に生きていけない。葛藤の末、彼女が選んだのは……。
レベッカは親友のリリアンに頼み、ロゼッタを立派な歌姫に育てるよう強引に約束すると、娘を置いて去ってしまう。
そして彼女は、幼い頃に夢描いた歌姫のドレスで美しく着飾り、愛するリチャードに捧げる”最期の乾杯”の支度をはじめる。